俺様先生と秘密の授業【完全版】
 

 どんっ、と。


 前なんて、ちっとも見てないあたしと。

 まるで、漫画の鉢合わせシーンみたいに見事にぶつかったのは。

 ……今さっき、屋上で別れたはずの、岸君。

 お約束みたいに、裏庭出口で尻もちをついたあたしと。

 てんてんと、転げていくお弁当を、呆然と一瞬見つめ。

 でも、すぐ気がついて、お弁当を拾って、立たせてくれた。

「なんで、加月さん。
 こんなところにいるの?」

 それは、こっちのセリフよ!

 フツー、告白を聞いた後ってさ。

 返事するまで、ちょっと、待ってって言うじゃない。

 ん、で。

 初めから、よっぽどラブラブじゃない限り。

 一日とか、せめて少し時間をおいてから、付き合うかどうか、決めるじゃない。

 なのに、じゃぁね、って、別れた直後に、もう一度会ってどうするのよっ!

 どっちにしろ、放課後には会う予定だったけど。

 こんな、ソッコーで顔を合わすなんて。

 お互い、めちゃくちゃ恥ずかしいし、落ち着かないじゃない!

 ……って。そか。

 岸君も、お昼ご飯、か。

 あんましお友達がいない人が。

 一人でご飯を食べているところ、見られたくなかったら。

 保健室で食べるか、こんな裏庭か屋上を使うしかない。

 岸君は、きっと裏庭派なんだ。

 なんせ、主の早瀬倉先生が、イケメンなもんだから。

 保健室は、なんとなく女子専用っぽくなっているし……


 ……って。


 え~~ん。


 やだ。


 また、保健室のこと思い出しちゃったよ~~

 

 
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