丘の上より
「あなたはこれからその人を愛すのです。」
俯いていて彼女の表情は伺えない。
―――ただひとつ、泣いていること以外は…
「…健史は、今好きだと言ってくれる人を大切に思ってください。」
時折見せる光を放ったような涙が草木へと落ちてゆくのがわかる。
「―――今日の思い出だけを残して、私を忘れて下さい。」
その言葉はアクマの本音ではないことぐらいわかっていた。
しかし、それは
俺の幸せを願ったアクマの思いやりであるのだ。