丘の上より





「アクマが…いない!?」








そこには黒い人影はなかった。







丘には大きな木があるだけで、なんだか寒々としていた。







「あ…アクマ…」







落とした鞄をそのままにし、駆け出す。







頂上で健史はひざまづいてどこかに隠れていないかと捜し出す…。








「―――アクマ、どこ行ったんだよっ!…出てきてくれよっ!」








昨日雨が降ったばかりのせいか、草木が濡れている。



じわじわと健史のスーツの膝は染みてきた。



しかし、今はそれどころではない。





「―――アクマっ!」








声にできるくらいまで叫んだ。








< 138 / 170 >

この作品をシェア

pagetop