丘の上より
「アクマが…いない!?」
そこには黒い人影はなかった。
丘には大きな木があるだけで、なんだか寒々としていた。
「あ…アクマ…」
落とした鞄をそのままにし、駆け出す。
頂上で健史はひざまづいてどこかに隠れていないかと捜し出す…。
「―――アクマ、どこ行ったんだよっ!…出てきてくれよっ!」
昨日雨が降ったばかりのせいか、草木が濡れている。
じわじわと健史のスーツの膝は染みてきた。
しかし、今はそれどころではない。
「―――アクマっ!」
声にできるくらいまで叫んだ。