丘の上より
会議が終わり、みんなが席を立っている中、ゆきのは一呼吸ついて立とうとした。
「――都丸さん…」
この声には覚えがあった。
少し胸の高まりを抑えながら振り向いた。
そこにはやはり、彼女が思っていた人が振り向くのを待っていた。
「大塚くん…」
健史は開いた携帯をゆきのに見せる。
「携帯のアドレス教えてくんね?」
「え、い…いいの?!」
「あー、いいも何も明日巡回当番じゃん?やっぱ連絡とか取れた方がいいでしょ?」
「あ!そうだよね。ごめん、じゃぁお願いします。」
「うん。」
チャラン…
赤外線通信が終了したベルが鳴る。
「ありがと。」
「うん、それじゃぁ…」
健史は携帯を閉めてかばんを背負い始め、部屋をでようとした。
「――っあ!待って!」
「ん?」
ゆきのが呼び止めた健史は微笑んでいた。その表情にゆきのは目を奪われる。
「…?」
健史は首を傾げた。