丘の上より
「ねぇ、アクマは生きてたとき、なにをしていたの?」
健史にとっては、素朴な疑問なのかもしれない。しかし、私にとっては難題のように思えた。
なぜなら―――
「…私には…、生きていた頃の記憶がありません。」
「…じゃぁ、家族とかも――」
「覚えてないのです…」
そう、なにもかも…。
「そんな…」
「でも、ここに来てからの記憶はありますよ。今年で325年になります。」
「さ…さんびゃく??」
健史は目をまんまるにして驚いた。何度も瞬きをし、アクマの肌をうかがった。それに気付いたアクマは言った。
「あぁ、私は歳をとらないのですよ。」
アクマは少し笑った。その笑い顔は美しかった。アクマは、健史の頬が赤らむのを見た。
アクマは健史を見た後、目を閉じて上を向く。
「――私がこんな姿で成仏っきないのは、きっと昔にとても悪いことをしてしまったせいだと思うのです。」