◆兄貴の彼女◆
そして気づいたら俺は、その川に入り、彼女の前に立ってた。
「……アンタ、兄……」
兄貴の墓に居たよな?って言おうと思ったけど、様子がおかしかったから、言うのをやめた。
「石……」
「……え?」
彼女は涙を流し、俺を見てそう呟いた。
「石?落としたのか?」
「私……ごめんなさい。あれがなきゃ……私」
彼女は俺の制服を掴み、泣きじゃくった顔で俺に謝り続けた。
「落ち着けって!石?どんな石だ?一緒に探してやるから!」
「赤い石……ペンダントの」
「赤い石のペンダントだな!」
正直自分でも、何やってんだ俺って思ったけど、あの時俺は、確かに何かを感じたんだ。
それを知るのは、もうちょっと先の話。