◆兄貴の彼女◆
「夕斗!」
美佳が、こっちに向かって叫んでいる。
それに気付いて彼女は立ち上がり、俺に頭を下げた。
「あの、ありがとうございました」
「あ、いや……」
「クリーニング代、払います」
「いいって。別に……洗濯すれば落ちるし」
俺達が探し終える頃には、すでに野次馬はほとんど居なくなっていた。
「でも!」
「見つかってよかったな。じゃ、俺先行くな」
俺はそれ以上の言葉を聞かず、川から上がった。
そんな俺に美佳が近づいてくる。
「ちょっと何してるのよ!しかも、あの子って昨日の……」
「悪い美佳。俺家帰って着替えて学校行くわ」
「ちょ、ちょっと!!もう、何なの?」
そんな美佳の声を背中で聞いて、俺は家に向かって歩いた。