◆兄貴の彼女◆
「あ、ペンダント」
俺が先に目に入ったのは、首から大事そうに掛けていた、俺が見つけたあのペンダント。
「あの時は、本当にありがとう。あれから、大丈夫だった?」
藤沢は、どっちかと言うと大人しそうな感じで、声はとても透き通っている。
「うん。大丈夫。見つかって、本当良かったよ。なんか大事みたいだし、今度からは落としたりするんじゃねーぞ」
何言ってんだ俺。
俺が藤沢に言いたいのはそんな事じゃないだろーが。
でも予定外。
俺が聞きたかった事を藤沢から話し始めた。
「神崎君って……神崎京介先生の弟さんだよね?」
「え……?」
「あ、ごめんなさい。いきなり」
それを言われてからの俺は、止まらなかった。
「昨日、兄貴の墓のとこいたよね?あれやっぱり、藤沢?」
藤沢は、首を縦に下ろす。
「やっぱ、藤沢か……ずっと気になっててさ」
「あの日はごめんなさい。逃げるつもりはなかったの。けど、あなたが神崎先生の弟さんだって事はすぐ分かったわ」
「え……どうして」
藤沢は、今までにない悲しい顔で俺を見て言った。
「だって神崎君、先生によく似てるから」
また心臓、騒がしい。
そして……痛い。
そんな顔するなよ藤沢。
「そ、そっか……ねぇもしかして藤沢って、兄貴の高校の生徒……とか?」
質問が湧いてくる。
何で兄貴の墓に?
何でここに?
一体……何の目的で……?
「そうだよ。神奈川の高校で、私の担任だったの。先生は」
そっか。
兄貴の生徒だったから、あの日兄貴の墓参りに来たのか?
じゃ、何で逃げた?
それに……。