◆兄貴の彼女◆
退学処分を告げられて2週間後の今日、彼女は学校を出る。
「あの噂、本当だったんだ」
「大人しそうな顔してんのにね」
「やる事やってんだね」
生徒達の言葉に一言も発しないまま、彼女は鞄を取り、教室を後にした。
<職員室>
「藤沢、これからどうするのか決めているのか?」
副担任の先生が、彼女を心配そうな顔で眺め質問する。
しかし彼女は、笑顔一つ返すことなく返事をした。
「……はい」
「そうか……もし不安なら、先生が他の学校を紹介する事も出来るんだぞ?」
「いいえ、大丈夫です。私、まず行きたいところがあるので」
彼女は副担任の顔を見て、応える。
「東京か?……神崎先生のところなんだな?」
彼女は黙り、副担任から視線を逸らす。
しかし彼女はすぐ向き直り、深く頭を下げた。
「……それじゃ先生、お世話になりました」
「藤沢、あまり自分を責めない方が……」
副担任の言葉に何も返すことなく、そして彼女はこの学校を後にした。