◆兄貴の彼女◆
俺らは、授業が始まってるのも知らずに、何年ぶりの再会をした友達かのように、色々話したんだ。
「藤沢は何でこの街に?」
「先生に会いに」
「それって、墓参り?」
「うん。何度か目の前まで行こうとしたんだけど、なんだか行けなくて。この前も少し遠くから見てただけで……」
そういえば、藤沢は……兄貴の葬式には来てなかった。
来づらかったのか。
自分を責めてるくらいだ、行く資格がないとでも思っていたんだろうな、きっと。
「俺が連れてってやるよ。兄貴の墓に」
「え?で、でも……」
「大丈夫、きっと兄貴も会いたがってる」
俺は今度の土曜日、無理矢理約束を取り付けた。
それは藤沢のためでもあると思ったから。
「約束な」
藤沢は、少し困った顔で首を縦に下ろす。