◆兄貴の彼女◆
帰り道、藤沢は俺に面白い話をしてくれた。
「ねぇ神崎君?別れと出会いって、あるでしょ?」
「あ、ああ……」
藤沢は、別れと出会いについて話し始める。
「京介がね、私に教えてくれたの」
「兄貴が?」
「「別れ」と「出会い」は常に隣り合わせなんだって」
別れと出会いが隣り合わせ。
俺の頭の中は「?」だらけだ。
「亡くなっていく人も居れば、そのすぐそばで生まれてくる命がある。別れる恋人同士が居れば、そのすぐそばで出会って恋に落ちる男女がいる」
兄貴がそれを藤沢に話したってことは、今となってはなにか意味があったのかって疑いたくなる内容。
「もし、藤沢が俺と別れても、藤沢は、必ずまた誰かと巡り会う……って。」
当たりだ。
兄貴は、この話をしたときからもう決めていたんだ。
藤沢との永遠の別れを。
「何でこんな話されたときに気づいてあげられなかったのかな?京介からのSOSだったかもしれないのに」
「それは、仕方ないことだよ。俺だって、そんな話されても普通は気付かないし」
「ありがとう。神崎君は優しいんだね」
藤沢の顔が曇る。
俺、決めたのに……二度と曇らせたくないって。
俺に何ができる?
俺に……。
そうだ。