◆兄貴の彼女◆



「藤沢」


「何?」


「俺、藤沢の事……これからも「藤沢」っていっぱい呼ぶよ」

「え?」


ちょっと恥ずかしいけど、俺に出来る事といえば、少しでも兄貴の代わりになってやること。

俺と神崎京介は兄弟なんだから。


「藤沢言ってたろ?今では呼んでもらえなくて悲しいって」

「神崎君」

「なら、俺が兄貴の代わりに呼んでやるよ。「藤沢」って。顔とか全然似てないけど、声は若干似てると思うし、だから……その、だから」

「……ふふ……ありがとう神崎君」


あ、笑った。

少しだけど……笑った。

よかった。



「俺ら、友達な。ずっと、ずーっと、友達な」

「友……達」

「ああ」


藤沢は、また笑ってくれた。

そして俺に、こう言った。


「京介が言っていた私は誰かと巡り会うって、もしかしたら……神崎君の事だったのかな?京介が巡り会わせてくれたのかな?」

「藤沢……」

「私、友達なんて初めて。すごく嬉しいよ、神崎君」


俺も正直、嬉しいよ藤沢。

それが本当なら……俺、なおさら藤沢を幸せにしてあげなきゃいけないかも。

兄貴が巡り会わせた、この出会いに……。


「よし!今日から俺の事は、夕斗!って呼んでよ?兄貴にそう呼ばれてたし」

「夕……斗……くん」

「君でもいいよ?」

「じゃ、夕斗君で」


そして、俺と藤沢の変な関係が始まる。







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