◆兄貴の彼女◆
【6章】偽り、疑い、美佳の想い
そして、隼人がコンビニから帰ってきて、俺は「話したい事がある」と、隼人をソファーに座らせた。
「どうした?」
「今からする話は、時が来るまではお前らの胸の中だけにしまっておいて欲しいんだ」
隼人も美佳も、不思議な顔をしていた。
そして俺は静かに口を開いた。
「藤沢は、兄貴の彼女だったんだ」
俺のこの一言で、最初に声を出したのは、隼人だった。
「え……マジ?藤沢って、美佳が前に話してた?」
「うん」
どうやら美佳は、隼人に藤沢と俺の事を相談してたみたいだ。
「お兄さんの彼女……だったんだ」
「夕斗、お前何で兄貴の彼女とかいう人と一緒にいるんだよ」
「何で一緒にいるのかって聞かれると、よくわかんね―。けど、そんなに深い意味はない。そして俺は決めたんだ。藤沢にもっと笑っていてほしいって」
「夕斗、お前まさか……」
隼人が何か言いかけた時、美佳の震えた声がした。
「何で?何で夕斗がそんな事する必要あるの?」
「わかんね―けど、ひとつ言えるとすれば、俺と藤沢は似てるから。兄貴を亡くしてどうしようもない気持ち、俺にもよく分かるから」
「夕斗……」
隼人は俺に何か言いたそうだった。
すると。
「納得いかない!」
美佳が勢いよく立ちあがった。
「美佳」