◆兄貴の彼女◆
俺は、再び兄貴の墓の前に来ていた。
兄貴……兄貴……。
辺りは、真っ暗。
まるで今の俺の心の中みたいだ。
俺は、兄貴の墓の前で崩れ落ちた。
「兄貴……教えてくれよ」
答える事のない石に、俺は必死に話かける。
「なぁ、兄貴。藤沢は、兄貴の彼女なんだよな?兄貴が俺と藤沢を出会わせてくれたんだよな?」
辺りは、風に揺れる木々の音と、俺のむなしい質問だけが聞こえる。
「なあ!兄貴!答えてくれよ!」
なんで……なんで……。
何も言ってくれないんだよ。
俺は、兄貴の墓にもたれかかって、しばらく動けずにいた。
「俺もう、わかんねーよ」
藤沢にウソをつかれてるかもしれない事が不安なんじゃない。
それがすべてウソだったときに、俺の中での藤沢の存在が意味をなさない事に不安を覚えたんだ。
たぶん俺はこの時すでに……。
藤沢を違う目線で見ていたのかもしれない。