◆兄貴の彼女◆
藤沢は、俺の幼稚園、小学校、中学校のアルバムを見ながらブツブツ言っている。
「あれ?」
「どうした?」
「美佳さんとは、幼稚園のころから一緒なんだね。写真に、全部写ってる」
「まーね。幼稚園よりもっと前から知ってるけど」
「美佳さんにとって夕斗君は、幼馴染でもありながら、本当に大切な人なんだね」
藤沢は、写真に写る俺と美佳を見てそう笑顔で言った。
「なんだよ急に、そんなことないって」
そういえば、藤沢は美佳が俺の事好きって……知ってるんだよなたぶん。
「そうかな?……すごく、お似合いだと思うよ」
――ズキ。
あ、今すっげー心臓痛いかも。
好きな奴にこんな風に言われるのって、結構くる。
美佳は、俺が告白断った時、こんな気持ちになったのかな。
「そ、そうかな。まぁ美佳とは、これからも幼馴染でいたいからな……藤沢とも」
本当は聞きたくなかった。
試すような言い方って分かっているけど、何かに期待した。
「私みたいな人を友達って言ってくれるのは夕斗君だけだね。ありがとう。私もこれからも夕斗君とは『大切な友達』でいたいって思うよ」
『大切な友達』
想い伝えてないのに失恋決定。
「う、うん……だな」
「これからもよろしくお願いします」
純粋なその顔で言われちゃ、その先言えない。
俺、藤沢の事こんなに好きになっていたのか。
兄貴……。
いつか藤沢を俺色に染めたい。
藤沢は、その日アルバムを見て帰った。