◆兄貴の彼女◆
「じゃ、そろそと帰る?自由時間って言っても、待ち合わせ時間はあるんじゃない?」
そう卓也が切り出した。
そして俺らはファミレスを出る。
「あーあ、夕斗君が携帯持ってないのがショック」
愛がそう言った。
いや、持ってないんじゃくて、教えたくないだけ。
卓也たちも気をつかってか、俺が携帯持ってないって話したら、それに合わせてくれた。
「俺らがいるじゃん!今度遊ぶ時、なるべく夕斗誘うからさ」
「約束だよ?」
大和と愛がそんな約束する中、桜が俺に近づいてきた。
「夕斗君が……京介先生の弟だったなんて、びっくりした。なんか……運命感じちゃった」
また上目遣い。
「ああ、俺もビックリしたよ。まさか、兄貴の学校の子たちだったなんて」
ビックリしすぎてるよこっちは。
「私が、京介先生を好きだって話し、気にしないで?」
「あ、うん。わかった」
いや、特に気にしてないんだけど。
でも……なんで俺は藤沢の事は気にとめたんだろうな。
桜の事だって、可哀そうだって思ったら好きになってた?
それとも、藤沢が兄貴の彼女だったから、守りたいって思った?
兄貴も認めた、藤沢だったから?
なんか、もうわかんねーや。
モヤモヤがさらにモヤモヤ。
さっきから賑やかだった女子達の会話が止まる。
そして、愛が口にした。
「ねぇ、あれ……藤沢じゃない?」
え……?藤沢?
「はぁ?ドコ?」
奈々が怒り口調で言った。
そして俺は愛が見ていた方に目を向けた。
そこには、普通に買い物をしている藤沢がいた。
なんて、最悪だ。