◆兄貴の彼女◆
「ちょっと!藤沢!」
奈々が藤沢の肩を掴み、無理矢理自分の方向を向かせた。
「……!な、永沢さん……」
奈々の顔をみて、驚きを隠せない藤沢。
「うちらがいてビックリしてるみたいだね」
「う、うちらって……」
そして藤沢は後ろにいた俺らの方に目線を向ける。
「ゆ、夕斗君……?」
あまり、こういう場を見られたくなかったけど、藤沢が後ろを見た後、最初に名前を出してくれたのは俺だった。
俺の名前を呼んだ藤沢は、とても複雑な顔をしていた。
「藤沢……あのな……」
「ちょっと、来なさいよ!」
「……っいた」
俺が話しかけようとした時、愛がグイッと藤沢の腕を掴んで、俺の前に連れて来た
「あんた、夕斗君に謝りなさいよ」
「え……?」
何でそうなるんだよ。
俺は、本当に何やってるんだよこんなとこで。
何が合コンだよ。
何が告ったことから逃げたいだよ。
俺、藤沢にもうこんな顔させたくないって、兄貴にも誓ったよな。
「早く謝れよ!」
愛がさらに叫んで言った。
「おい……人前だぞ?」
大和がそう言った。
「関係ない!夕斗君はね、あんたみたいな汚い女とも仲良くしてあげてる優しい人なの?そんな夕斗君にまで近づいて……謝ってよ!」
愛が藤沢の頭を掴んだ瞬間、俺は愛の腕を掴む。
「もういいだろ?十分満足した?ってか……人の気持ち勝手に決めんなよ」
「……夕斗君」
俺は、愛の腕を離し、続けた。