◆兄貴の彼女◆
「藤沢は……千鶴は、汚い女じゃないから。それに、俺謝ってもらおうなんて思ってない。逆に千鶴には感謝してるんだ」
「……………」
その場に居た奴皆が黙って俺の話を聞く。
「千鶴は千鶴だよ。
それに、俺が千鶴を選んだんだ。
同情とか、そういうんじゃない。
素直な感情なんだよ。
千鶴を……好きな気持ちは、素直な感情なんだ。
好きな人と一緒に居たいって思って何が悪いんだよ。
好きな人を守りたいって思って、何が悪いんだよ」
「……夕斗君、もうやめて……」
俺は、藤沢の話を無視して続ける。
「教えてくれよ。お前らにとって、好きな人の存在って、なんなんだよ」
俺、何も間違ってないと思う。
「それだけじゃ、ダメかな?俺が千鶴と一緒にいたいって理由」
「……夕斗」
卓也は俺の尋常じゃない態度に、少し戸惑っていた。
「あとひとつ、兄貴は千鶴のせいで死んだんじゃない。これは、何もかも運命だったんだ。兄貴の」
俺はそう言い残して、藤沢の手を引き街の中へ歩き出した。
俺やっぱり藤沢が好きだ。
ごまかせない、この気持ちはもう。