17ぱれっと、
なぜかふいに、あの時のことがフラッシュバックした。
「あたしは、拓真のことは好きだよ?それはそういう気持ちじゃない。なんていうか・・・あいつ危なっかしいでしょ?みんなにも分かると思うけど」
「まぁ確かにな」
「いじめられてたって反撃もしないし、上履き隠されたって別にいいとか言ってたし。その上履き、便所にあったんだよ?」
「小学校の頃は本当に冷めてて余計に敵作ってたの。だからあたしが守ってやんなきゃって・・今だからこそあんな感じでも文句言う人は居ないけど」
もう一度視線を向けると、不思議そうにこっちを見ている。

「結論から言うと、恋愛感情ではないよ」
少し切なくなって目を伏せると頼が笑った。
「あいつはお前のこと本当のお母さんみたいだと思ってんじゃねーの?いつまでもこんなんじゃだめだとも思ってるだろうけど」
「それは分かってる」
「たぶん、拓真はお前を好きだよ」
その言葉を聞いて「それは違うよ」と言う。
「そもそも何でこんなこと聞くの?」
ずっと前から知ってるはず。
拓真への『思い』は『想い』に変わることはない。

頼は隣に居る旬斗のことを見た。
寝ているのを確認すると、小さい声で言った。
「お前と旬斗のことがあったから一応聞いておこうと思って」
『旬斗のこと』・・・胸が痛くなった。
「旬斗のことは別に、もうなんとも・・・」
「でも旬斗は違うんだよ」
「・・・・何」
隣に寝ている歩を見る。大丈夫だ・・・。
「歩ちゃんがどうかした?」
眉をひそめて心配そうに聞いてくる。
こういうときばっかり、本当の姿を出してくるんだ。
「ううん、ここじゃなくて、あっちで話そうよ」
指をさす場所は屋上へと上がって来る階段がある建物の上。
何かあるときはいつもここで空を見ていた。
「・・・分かった」
席を立ち拓真を見ると、やっぱり寝ていた。




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