カラダから始まる恋ってありますか?
「とにかく、拭いた方がいいよね?」
慌ててバックを床に置いて部屋の中に上がり、電気をつけるのも忘れて
薄暗い部屋の中、クローゼットからバスタオルを幾つか取り出し
玄関先で立ち尽くしたままの
裕介さんの頭に背伸びしながらフワリと被せて
バクバクと波打つ鼓動を感じながら裕介さんの髪を拭いた。
裕介さんは、あたしにされるまま。何も一言も話さない。
ただ、俯いているだけ。
沈黙が怖くて、あたしは必要以上に口を開く
「天気予報、当たらなかったね。きょう雨降らないって言ってたのにな」
「……」
「明日は、晴れるのかなぁ」
「……」
シーンと静まり返った部屋の中に、ゴシゴシと裕介さんの髪を拭くバスタオルが擦る音だけが悲しく響き渡っていた。