カラダから始まる恋ってありますか?
「乗って」

近くの駐車場に停めてあった彼の車に乗り込み助手席に腰を下ろした。

動き出した車の中。

互いに何も話さないまま。静かに流れるBGMを聴きながら、窓から見える満月を見つめた。


そうしないと、緊張でどうにかなりそうだから…。


「ちょっと…待っててね」


程なくして着いた彼の部屋の前。スーツのポケットの中から鍵を取り出し


ガチャンと鍵を開けた。


ただ鍵を開けただけなのに


これから彼の部屋の中に入ると想うと…胸の奥が熱くて。


緊張で、息が思うようにできない。

ゆっくりと開かれる扉。


今朝まで、この部屋の中にいたのに。


不思議だね、まるで初めて来たような感情。


ヤッパリ、あの時のあたしは正気じゃなかったんだ。


今更だけど、勢いに任せて、あんな事をした自分が恥ずかしい。




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