白い手-黒い眼
~仲間集め3~

「先輩、元陸上部なんですよね?いやぁ、うやらましいですよ~。」
「はぁっ…羨ましいでしょ…」
「はいっ。私、中学迄文学部でして~。けど、この部に入ってから、陸上部以上に足が速くなったんですよ~。」
「…はぁっ…そか…」

奈木は見事なまでに、暁に引っ張ってもらっている状態だ。
少なくとも奈木は全力で走って、無様にも息切れしてまともに話せない。
一方、暁は何不自由無く、淡々と話している。
しつこいようだが、暁が奈木を引っ張っているのだ。

『これでも去年迄はレギュラーで陸上部だったのになぁ…』
「先輩っ、右に曲がります。」
「はっ…はいっ…」

走っているところを何度か同じクラスの男子に見られ、奈木は赤面した。

「あのっ…どこまで…止まっ…」
「部長を助け出したらお礼は弾みますよ。」

意味が理解できない。
むしろ話が通じない。

「見えましたっ!!加速しますよっ!!」
「ふへぇ!?」

情けない声を出してしまい、恥ずかしく思った、だろう。
その時は全速力で走っていて、そんなこと考えられなかった。

「部長~!今行きますよ~!!」

前方を見ると、四角く縁取りしてある一畳のスペースに見たことの無い男子が『近寄るなっ!!』か『待て!!』と制止を促しているように見える。

「部長、めっさ喜んでますよ~。今行きま~っす!!」
「いや…はぁっ…暁…」

あと数十メートルの所で、一人の男子が出てきた。
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