白い手-黒い眼
~仲間集め4~

突然男子が飛びだしてきて、暁は驚いていた。

「こんなはずじゃないのに!!」

奈木は直感で悟った。

『これ…小学生の時にした、〔警察と泥棒〕?』

一種の鬼ごっこ的な遊びである。

『なら…この次の展開は…』

突然の邪魔者に怯んだ暁は、撤退しようと、後ろを向いた。

『駄目だ、囲まれてる。』

暁の表情で分かった。

どうしよう、と挙動不審な暁を見ながら、奈木は小学時代の記憶を辿った。

『敵多数、味方二…前方一人、後方多数と見て…』

奈木は暁の手を引き、前方の男子に突っ込んだ。

『〔警察と泥棒〕なら、片一方が辿り着くのが、良策…手を放せばわたしが囮になって…』

男子目の前数メートルの辺りで急に歩幅を変え、暁の手を放した。

「あっ…奈木ちゃん…」

暁もその意図が分かったらしく、男子を遠回りに避けた。
男子の注意は引き付けれた。後はその手から逃げるだけ。
伸びてくる手をギリギリで回避しつつ、抜き去るタイミングを図った。

『暁は…もう数歩…今だ!!』

奈木は伸びてきた手を払いのけ、男子を抜き去った。
目の前には暁がいて、手をこちらに差し出している。
まるで、その手が奈木を助けてくれる、加護の手のように。

奈木が暁の手を取ると、安心感が生まれた。

『これが、手の温かさかなぁ…』

目的地数メートル前になり、速度は落ちない。

「あっ…ちょっ…暁っ…!?」
「部長~っ!!」

一畳スペースに奈木もろとも、その男子に突っ込もうとしている。

「ちょっ…ぶつか…」

ドスッ

その小柄な体躯が男子の身体に飛び込んだ。次いで、奈木も巻き込まれた。

ドシャ

奈木は眼を閉じていた。痛くはなかった。
眼を開けると真横に男子の顔があった。

苦痛に顔を歪ませ、だがしっかり二人を抱き止めていた。
そのお陰で、飛び込んだ二人には外傷は見当たらない。

ただ、その男子が頭を打った時に出来た傷から赤い体液が流れているだけだった。

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