白い手-黒い眼
~仲間外れ~

保健室というのは、意外と遅くまで開いている。

奈木と暁は、部長と呼ばれている赤井 悠連れ、保健室を訪ねた。

保険医は初めこそは驚いていたが、常連なのだろう、呆れ顔になっていた。

二人は悠が眼を醒ますまで保健室にいることにした。

「…で、ですね~、こう…奈木ちゃんが華麗に舞っていたんですよ!!」

暁は保険医と仲が良いのか、ジェスチャーを交えつつ、先程のやり取りの再現をし、保険医はというと、相づちを咬ましつつにこやかにその様子を眺めている。
完全に孤立してしまい、奈木はなんとなく、未だ眼を醒まさない悠を見やる。
無防備な寝顔を晒けて爆睡中の悠は、なんとなく幼く見えた。



『何というか…』



「先輩、どうかしましたか?」

いきなり顔を覗いてきた暁に驚きつつも、平然を装う。

「いんや、何でもないよ。」

笑顔が引き吊っているに違いない。

「そんな事より、先輩!」

元よりそんな事で済む奈木の隠し事は、呆気なかった。
そこに、保険医が割り込む。

「先輩、先輩って、あなた三年生でしょう。用法が違うわ。」


『……え?』


「けど、こっちの方が親しみやすいのです!!」

この無邪気で小さく、奈木から見てもかわいいと思ってしまう女の子は実は先輩だったなんて、これっぽっちも思っていなかった奈木だった。

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