reverse【完】
他の人が付けた…?
俺じゃなかったってことか…?
何もなかった…?
俺はエミを抱いていないということか…?
だったら
美咲と別れる必要なんてない
きちんと話をすればいいじゃないか
いや
違うな
何もなかったとはいえ
抱いたと思いこんで
その事実を隠そうと
美咲に嘘をついて、エミと会っていたことは
なかったことには出来ない
誰かを抱いたとか
抱いていないとか…
そんなこと美咲には
重要じゃないんだ
エミを責めようとは思わない
気付けば
ドアノブを指が白くなるほど
握りしめていた
言いようのない怒りがこみ上げてくる
あの時、美咲の気持ちを無視して、自分を守ることに必死になっていた俺自身に…
エミを振り返ることも
言葉を発することもなく
俺は黙って部屋を出た