reverse【完】
美咲が昔、俺に言った
『どんなに大変でも、どんなにきつくても、仕事で一番になって。会社でなくてはならない存在になって。私は、責任を持ってどこに出しても恥ずかしくない子供たちに育てるから』
そして美咲は実行した
一歳愚痴は言わず、家事に育児に尽くしてくれた
そんな美咲が隣にいてくれたから
俺も最年少で課長になれたと思っている
愛しているのはもちろん
尊敬し、俺を本当の男にしてくれるのは美咲しかいない
美咲は何て言うだろうか
会社を辞めて
美咲の実家の近くに越してきたことを…
美咲はどう思うだろうか
離婚届は出していない
もう一度、傍にいて欲しいと伝えたら…
美咲の実家の扉の前で
大きく深呼吸をする
来月から働くことになった会社の面接より、緊張している
チャイムに伸ばした指が震え
言いようのない不安が押し寄せる
ピンポーン-…