憂鬱な午後3時
懐中時計
俺には、行き着けの喫茶店がある。
此処は、余り知られて居ない穴場らしい。

《カランカラン…》
乾いた音の鈴が、静かな店内へと響き渡った…。

「やぁ誠君、いらっしゃい」
40代前半の、ちょび髭のオッサン。
いつも、髪型はオールバックで少しだけ、キザな雰囲気を醸し出しているが、意外と似合っていてカッコイイ、今風で言うと…あれ、何だっけ?…あ、そうそう。
ちょい悪(笑)

「マスターこんにちわ」
俺は会釈をして、いつものカウンターの席へと腰掛ける。

「誠君…いつもので良いのかな?」
マスターは、控えめに俺に話掛けながら、グラスを布巾で丁寧に拭いている。

「うん、いつもので…」

俺が、その返事に頷くと、マスターは奥のキッチンに居る奥さんに、「誠君に、いつものアレを出してやってくれ」

奥から、「はーい」…と、返事が返って来る。

マスターと奥さんは、この喫茶店を2人で切り盛りしていると前に聞いたことがある。

奥さんは、とても綺麗でマスターより、10歳年下…30歳だと言う。
年の差なんて関係ないと言わんばかりに、とても仲良しで羨ましいくらいだ。

この喫茶店の常連になってから、半年…。
「ちょっと待っててくれよ」
氷を入れたグラスに、水を注いで俺のテーブルの前に置いてくれた。

俺はグラスに口を付けて少しだけ、この喫茶店に出会った日のことを、思い出してみる。


ーあれは、半年前のことだったー

俺は、学校の帰り道…少し、寄り道をして帰ろうと思って、住宅街の方へと歩き進めた。

住宅街と言っても、それなりに店はポツポツ…とあった。

個人店が、ほとんどで営業しているのか、休みなのかよく分からないものばかりだったが、俺は新鮮な気持ちだ。

いつも、通る帰り道は車の通りが多くて煩い場所だったからだ。
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