千景くんは幼なじみ
「…ひとり?」

振り向く前に、わかった。

だってこの声、

ちーちゃんだ。





振り向くと、やっぱりちーちゃんが私の後ろに立っていた。

瀬尾くんは少し向こうの席に腰を下ろし、女の子たちと楽しそうに喋っていた。

「ひとりー。…何でわかったの?」

「あぁ、だって並んでる時ココ入ってくんの見えたから。…あの怖いオンナは?」

「怖いって…穂積?」

そうそうって言って、ちーちゃんはフフっと笑う。

「里田の姉ちゃん、マジ怖ぇーって。あの姉弟、性格真逆だよな。弟はモジモジ、姉貴は豪快」

ハハハと笑うちーちゃんを、見上げる。

「まあねー。あぁ…そーだ。ちーちゃんが昨日男寄りとか言うから、穂積昨日家で泣いたみたいだよ?しかもオカマなんて本人の前で言うー?」

「は?じゃー、陰でコソコソ言えば良かった?」

そうじゃないー。

もおっ。ちーちゃんにこんな話、通用しないか。

「もういいよ…」

ホント人をバカにしてる。

穂積だって女の子なんだよ?

私だって、ちーちゃんのお試し彼女じゃないんだから。

前を向くと、ちーちゃんが私の背中に手を添える。


< 163 / 460 >

この作品をシェア

pagetop