千景くんは幼なじみ
誰もいない裏庭で
裏庭横の、人気のない部室前。

さっきは迷路であんなに賑わっていたのに…怖いぐらい静まり返っていていた。

千景と一緒じゃなかったら、かなり不気味。





千景は、肘の上から水道でシャバシャバと水をかけている。

「そんなにかけなくても大丈夫だよ~。大げさぁ」

「冷たくて気持ちー。結愛も、やる?」

「んー。じゃあ、ちょっとだけ。…うわ、本当だぁ。冷たくって気持ちいい」

肘から水をかけてると、千景が後ろから抱きしめるように、両腕を突き出してきた。

ひゃあっ。

何か、抱きしめられてますけどっ。

手が水で濡れてるから、千景を押しのけるのをためらってしまう。

「ちょっとぉ~。千景…ズルい」

「スキありぃ」

キュッと水道を止め、後ろからギュッと抱きしめられる。

トクトクと

少しずつ早くなる鼓動が

心地良い。

手はひんやりしてるのに、千景の暖かさが背中から伝わってくる。






二人だけの空間に…

酔いしれて

ずっとこのままでいたいと

思ってしまう。






< 430 / 460 >

この作品をシェア

pagetop