千景くんは幼なじみ
キスされるかな?って思ったら

…違った。

「これ見てみ」

「え?」

目の前に突き出された、小さな花火。

「結愛と、ふたりで…これやりたかった」

「線香花火?うわぁ~、懐かしいね!」

「…だろ?」

そういえば、小学校の自治会の夏祭りの締めは

いつも、花火だった。

派手な花火ばっかりが人気で、早くもらいに行かないと

線香花火だけが残る。





競って取りに行けない私の手元には、もちろん線香花火。

ちーちゃんは、一番派手な花火を取りに行って

友達とスッゴい騒いでいた。

しばらくして私の所にやって来たかと思ったら、

なぜかちーちゃんは、私のそばにしゃがんで

線香花火が落ちるのを…

じーっと眺めてたっけ。






パチパチパチ

小さく小さく…弾ける花火。

「かわいーよね、線香花火って」

「まぁなー」

「小学校の自治会の夏祭りで…私の線香花火、じっと見てたよねぇ」

「結愛、覚えてた?」

「うん。ちーちゃん…しゃがんで何考えてるんだろーって、思ってた」

私がそう言うと、ちーちゃんはプッと吹き出した。

「また…名前元に戻ってるしぃ」


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