千景くんは幼なじみ
穂積は慌てて頬を指で拭う。

「眠ってんのに泣かれると…慰めようねーじゃん。唇で、拭いただけ」

きゃあ。和奏くん、今日は大胆っ。

ドキドキしながら、二人の成り行きを見守る。

「口でって…。なっ…なにっなにっ…を」

穂積、カミカミ。

完全に動揺して、目をつぶり頭を振ってる。

「和奏ぁ?ケンカうってんのか!?」

「うってない。…何で泣くんだよ。あんなヤツの為に、泣くなよなぁ」

和奏くん、肩を落としため息をつく。

あんなヤツ?

思わず千景を見た。

千景は笑みを浮かべ、私を抱き寄せる。

そしてまた二人、部室の中に視線を戻した。





「もう、帰ろ。穂積、いなくなったから多分ここだと思った。そしたら泣き寝入りしてっし…」

「だって…私また千景くんにあんな事言った!しかも殴ったし…。最低だ」

「いーじゃん別に」

「良くないっ!すぐカーッとなる自分にも腹立つし、本当に女の子らしくなれないっ。

結愛みたいに…可愛かったら…私も、千景くんに好かれたのかなぁ…」

穂積は…

大粒の涙を、目からポロポロと零していた。




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