長編小説番外編集
南波家の母
うちの両親はなかなか家に帰って来ない。
母親は服飾関係の仕事をしていて、念願の海外進出してしまったため、どうやらしばらく日本には帰りたくないらしい。
父親は泊まり込みで、ホテルのシェフをしていて、朝から晩まで働いている。
こっちは休みがなかなか取れないらしく、母よりはマシだが、あまり帰って来ない。
必然的に家の中には俺と、暁しかいない状態。
蘭は母と住んでいるから、今は一人暮らし同然だ。
そして両親がいない間、この家では……なぜか俺が母役だ。
午前6時
俺は鳴り響く目覚ましを止めて、一階のキッチンへと行く。
二人分の弁当を作りに。
料理自体は父から教えてもらっていた。
その頃の暁は母の言うことも父の言うことも聞かなくなり、不良まっしぐらだった。
思春期に入ってた頃だったのかもね。
俺はまだ小さくて、自分のことで精一杯だったから、その頃の暁の記憶は薄い。
その頃にはすでに、蘭はいなかった。