5月10日
最初に症状が現れたのは一番年寄りの牛だった。
よだれと口に水疱。すぐにピンときた。
ウチも感染したのだ。
血の気が爪先から退いていく。
県内の畜産農家を震撼させていた家畜伝染病の症状だった。
法定伝染病のそれは、一頭の感染が確認されれば同じ畜舎の家畜も処分しなければならない。
人間に感染しないし、感染した肉を食べても安全だ。
それでも感染拡大を防ぐ為、殺さなければならない。
それは大きな衝撃だった。