5月10日
遺伝子検査の結果は間もなく出た。
陽性だった。
防護服を着た県職員がやってきて、牛舎付近の消毒をする。
処分は子牛を含めた15頭。すべて薬殺して重機を使って畑に埋める。
処分の前日、妻は一頭一頭、牛の身体を洗っていた。
鼻ぐりも手綱も新品に付け替えていた。
陽性反応が出たあの日、妻は耐えきれず、牛舎の片隅で泣いていた。
俺は気付かないふりをした。
ただ、2ヶ月前に生まれたチビが遊んでもらえるのかと、妻のシャツをくわえて無邪気に引っ張っていた。