帽子屋さん。
「それは、それは」
『あの日からみあちゃん、おこっちゃって、ぼくと話してくれないの』
少年の目から、涙が一粒零れ落ちた。
「ちゃんと謝りましたか?」
『ううん、あやまってない…』
「謝ったら、みあさんも許してくださるのでは?」
『いまさら、あやまれないよ…』
少年が拳を握る。
『だから、みあちゃんにぼうしをあげるの』
「帽子…だけ?」
『…うん』
「引っ越してしまわれる彼女に、謝れない、何も言えない」
『………』
「貴方は謝りたいのでしょう?」
『………』
「遠くに行ってしまわれても、忘れないでいてほしいのでしょう?」
『………っ』
「なら、今は−…」