帽子屋さん。
笑顔に戻った蒼くんが向かってくる。
『お兄さん、これ』
差し出したのは、70ミル。
帽子の前にあった札の値段通りのお金だった。
「ありがとうございます」
そう言って、30ミルを受け取り、帽子を渡す。
『あれ?70ミルって書いてあったよ?』
「特別価格です。お友達には内緒ですよ?」
人差し指を唇に当てながら言う。
『ありがとう…!』
そう言って、彼らのお母さんのもとへ駆ける。
『『お母さん、これ、僕たちから"おわびのしな"だよっ!』』
使い慣れない言葉なのか、あまり耳にしない言葉なのか、"お詫びの品"という言葉がぎこちなかった。
『あら、有難う。大切に使うわ』
みんな、笑顔だった。