漆黒の少女。
それから胃を少し持ち上げてメスを使って胃を摘出した。

メスで切った断面から胃液が噴き出し、風船から空気が漏れるように胃が萎んだ。

少女は、その萎んだ胃を両手に乗せて俺の前まで近寄ってきた。
胃液のせいで手術室は異臭で占拠されている。

「見て、あんな神秘的だったのに切り取ったら、薄く伸ばしたゴムみたいになっちゃった」

と少女は苦笑しながら俺を見ている。
多分、二週間前の俺なら悲鳴を上げてこの場から逃げたくなるはずだ。
しかし、今の俺は恐怖も感じない。

非現実的空間に馴染み過ぎて常識と非常識の境目が曖昧でくだらないものに自主変換されているのだ。

「ただのゴミだね。しかも異臭も酷い」

「うん、そうね。ただのゴミになっちゃった、残念だわ」

少女は胃をゴミ箱に捨てて再び手術台に向かった。
更に臓器を全て取り出しゴミ箱に捨てた。

そして、両腕と両足を切り落として空になった腹の中に綺麗に収納して下腹部を縫い合わせた。

手術台に居た物体は達磨のような姿になっている。
少女はインテリアすると言って手術室の隅に飾った。
不思議なことに肺と心臓以外の臓器を摘出したのに規則正しく心臓は動いている。

後、テーブルに乗せている二体はどうするのだろうか。




< 20 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop