漆黒の少女。
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ひぐらしが鳴いている、地上に出てきては短し命が消えるまで叫んでいる。

縁側に座り、夏の暑さを感じている。
そんな暑さを薄めてくれている風鈴が涼しげに笑った。

夏休みに田舎に住んでいる母方のおばあさん家に泊まりに行った。
民家は少なくあまり人気がない。
滑りの悪い襖を滑らして縁側に座った。

麦茶が入ったグラスの氷がカランっと音を奏でて浮かんだ。
麦茶を飲み干してグラスの中は氷だけになった。
グラスの中の氷を眺めていると何処からか視線を感じる。

庭を見渡してみると庭から玄関に行くための通路に少女がぽつりと立っていた。容姿は真夏だというのに黒のワンピースだ。

少女と俺の間に何秒間かの沈黙が流れた、その沈黙を簡単に切ったのがおばあさんだった。

おばあさんは縁側に座り、目尻に皺を寄せて微笑んでいる。すると少女は俺とおばあさんが座っている縁側の方へと近づいてきた。
そしておばあさんの横に座り、俺を警戒するようにチラチラと見てはおばあさんの顔を見ている。

「このお兄ちゃん誰??」

少女の人差し指が俺を捕らえた。
そして、おばあさんは「私の孫だよ」と少女の髪を撫でている。

少女は興味津々に俺を見ている。しかし、おかしなことに視線は少し下を向いているのに気づいた。

少女の視線を辿って行くと俺のジーパンのポケットからはみ出しているドロップの缶を少女はじっと見ていたのだと分かった。




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