夢だったらいいのに。
悪夢のはじまり。

2月

まだ寒い2月中旬のある日、母親からメールがきた。
父親が年に1回、友人との旅行で留守にする日、母親がフリーになる貴重な期間を家に泊まりにくる予定の前の週だった。

「お腹の調子が悪いのが続いてるから、泊まりに行けないかも。
川崎のこないだ行ったバイキングにまた行きたいけど、お腹こわしてたら食べられないし…。」

私はそんなに気にしなかった。
『ふ〜ん、腹こわしてんだ、一緒にいっぱいDVD見て美味しいモノ食べようと思ったのになっ。
早く治しておいでよ』

次の週、
「近所の病院に行ったら、大きい病院で診てもらえって紹介されたから、念のため検査に行ってくるわ。」
『その日仕事休みだから、私も行こうか?』
「たぶんたいしたことないと思うからいいよ。
万一入院とかになったら来て。」

私はまだ全然オオゴトだとは思わなかった。
胸の中にちょっとした不安みたいなモノはあったけど、まだ漠然としていて、よくわからなかった。

検査当日、私は家で思う存分寝坊して、愛猫とゴロゴロ遊んでた。
夕方、母親からメールが入った。
「便がつまってるみたいだから、食事抜いて点滴して様子見るように、入院になっちゃった。
検査がいろいろあって凄い時間かかっちゃってさぁ、パパなんてついてまわって夕方4時までお昼食べらんなかったんだよ〜」

だから私も行くって行ったのに。
どうせ暇してたのにさ。
私の父親は、母親より15歳も老けていて、もう74歳だ。
もともとお腹が弱くてガリガリ、身長172センチだが、体重は40キロ欠けるだろう。
とにかく体が弱いのだ。
食事の時間が狂ったりすると、すぐに死ぬ苦しみみたいにヒドイ下痢をするので、私としてはその時は、母親の病気よりも父親が大丈夫か気にしたくらいだ。
母親とは、明日病院に様子を見にいく約束をした。
便が出にくい、つまる、ってなんだろう…
考えてもよくわからなかった。
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