―MEMORY―
喪うMEMORY
この頃、彼女の様子がおかしい。
前はよく笑っていたのに、薔薇を見ても笑わない。
いつも難しそうな顔をしている。
僕は、君の笑顔が見たい。
そして、彼女はこの頃咳き込む。
風邪かなと思っていたけれど、一向に良くならない。
そんなある日だった。
僕は珍しく一人で薔薇を見ていた。
いつもは彼女が常に傍に居て、一緒に見ていたから。
庭にまで響く電話の音。
彼女が居ないから、他に出る人も居ない。
僕は少し急ぎながら、受話器を上げた。
「……もしもし」