たからもの

次の日、直人からのメールの音楽で起こされた。

眠い体を起こし、携帯を開く。

受信：直人
『昨日はごめん。
僕、抱ききってないから。
最後までしてない。
ちゃんと途中でやめた。』

私は意味がわからなかった。

(え…昨日…。)

私はすぐに返信した。

送信：直人
『なにそれ…途中でやめたって…。』

すぐに直人から電話がかかってきた。

「もしもし。」

「最後までしてないんだ。」

「それはどういうこと？」

「お前のことがすきなのかわからななかったから…。」

「すきって言ったじゃん…。じゃあ何で途中までやるの…。」

「…ごめん…。」

私はすぐに電話を切った。

悲しくてたまらなかった。

何より、惨めだった。

あんなに簡単に体を預けてしまったこと。

最後までしてないって、貞操奪われたことになるの…？

複雑な想いだった。

「千…千…。」

気付けば千の名前を呼んでいた。