緋桜鬼譚
男が足を止めれば、ジャリ、と砂の鳴る音が聞こえた。そんな些細な音が響くほどに、そこには静寂が広がっていた。
目の前には、他者を寄せ付けないかのように門が聳え立っている。事実、決して歓迎されてはいないだろう――特に自分のような者は。
だが、歓迎されないからといって帰るつもりはない。門の中へと一歩を踏み出せば、ざわ、と空気がさざめいた。
――まるで拒絶されているかのようだ。境界を越えた途端、周囲のすべてが敵であるかのような錯覚に陥る。あながち間違ってはいないだろうが。