緋桜鬼譚
一歩一歩、歩みを進めるたび闇は深くなる。今宵は新月――辺りを照らす明かりは弱々しい星明かりのみだが、臆することなく男は進む。
暗闇は彼の歩みを止めるにはなんの効果もなく、ただその目指す先まで、彼の行く手を阻む者など存在しないかに見えた。
やがて見えてくる、古びた蔵。入り口に灯された小さな明かりが、何重にも掛けられた鍵を照らす。
まるで鬼でも封じ込めているかのようだ――ふと思い浮かべた、そんな自分の思考に苦笑する。鬼、だなんて。何を考えているのだ。