緋桜鬼譚


 龍華が異変に気づいたのは、丁度一年前からだ。何かが敷地内を出入りしている、そんな気配。気づく、というより、それは予感に近かったのかもしれない。


 ――それが確信に変わったのが、たった今だ。空気がざわめく、肌が粟立つ。恐ろしいモノが迫っている――


 その原因として、思い浮かんだのは朔緋だ。五年間顔を合わせていない、たった一人の娘。


 閉じ込めたくて閉じ込めたわけではない。ただ、恐ろしかったのだ――いつか“それ”がくることが。


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