緋桜鬼譚


 いつの世にも「人ならぬ力を備えたモノ」が存在する。“それ”は異形のモノであり、常に忌み嫌われてきた。


 分かり合えぬモノは恐怖の対象だ。人々は“それ”を、ある時は自らの手で退治し、またある時は神仏の力を借り調伏してきた。


 だが――時には、“それ”を祓うことが不可能な場合がある。恐怖であっても、それは祓う対象ではなく崇める対象である時が。


“それ”を崇めるために、贄を捧げてきたのが龍華家だ。五百年に一度、“それ”を鎮める力を持つ娘が龍華家には生まれるとされていた。彼女達は皆、“それ”の棲む山へと捧げられたという。


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