緋桜鬼譚


 絡めた指は、予想を違え氷のように冷たかった――それでも、闇に融けずにしっかりとそこに存在している。ただそれが分かっただけなのに、瞳には涙が滲んだ。


 ああ、この手を待っていた――……


「――その手を離せ!!」


 突然の怒号にびくりと身体が震える。開け放たれた扉、灯りが照らす声の主。姿を見るまでもない、この声は――


「……お父さん?」


 今更どうして。もう、自分のことなんて忘れ去っていると思ったのに――五年ぶりに見た父は、射殺すようにこちらを睨みつけている。


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