緋桜鬼譚
それはただの予感に過ぎない。だが、不安を拭い去ることができないのだ――その不安がどこからくるモノなのかも、分からないけれど。
「俺が温羅だと分かっていながら離せと言うのか? 勇敢と無謀は同じようでまったくの別物だ、激情に駆られて刃向かう相手を間違えてはいけないな」
朱都が龍華に手を翳す。――嫌な予感がする。混乱する頭は予感の意味を理解するのを拒否するが、身体はそれを悟り、朱都を止めようと手を伸ばす――なんのためにかは、分からないままだけれど。