緋桜鬼譚
「何故娘を差し出すくらいできない? 本来なら喜んで捧げるものだろう? ……いいか朔緋、その瞳によく焼きつけろ。俺に刃向かうことが、一体何を意味するのか――……」
その手に灯る、紅蓮の焔。――そこから先の映像はいやに鮮やかで、時間の流れが遅い。放たれた焔、龍華を灼く紅蓮、断末魔、地獄絵図――塞がれた手では、それらから目も耳も覆うことができない。
――灰すら残さず、龍華はその姿を消した。
「どうして……?」
望んでいたのは、こんな出逢いじゃなかった。他にどんな出逢い方を考えていたわけでもないが――少なくとも、こんな残酷な出逢い。
――目の前にいる彼は、本当にあの手紙をくれたアヤトなの?