緋桜鬼譚


「あなた、誰なの……?」


「言っただろう? 朱都だって」


 朱都は嗤う。――信じられない。だって、アヤトはあんなにも優しそうで、朔緋に希望を与えてくれて――そうだ。


「ウラ、ってお父さんが言ってた。あなた、本当の名前はウラっていうの?」


「温羅は種族の名前だよ。俺個人の名前じゃない」


「……種族?」


「ああ」


 鬼の一族の名前だよ――“それ”は嗤って、そう言った。


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