緋桜鬼譚
「朔緋、お前は俺達鬼にとって、喉から手が出るほど欲しい餌なんだ。その血を啜れば、肉を喰らえば――得られる力は、すべての鬼を凌駕する」
「そのために、私をここから連れ出そうとしたの……?」
「――他に理由があるか?」
鬼らしい、冷酷な言葉。――違う、鬼だから冷酷なんじゃない。冷酷だから、鬼なんだ――……
檻が壊され、鎖が断ち切られる。けれどそれは、決して自由の証ではない。
朱都の顔が首筋に迫る――ああ、せめて嘘をついてくれたなら、騙したままでいてくれたなら。綺麗な思い出を抱いて死ねたのに。